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インタビュー「あの先生の “キッズ時代”」村岡聖美先生(謡・仕舞)

2021.02.16 コラム

先生たちの “キッズ時代” や “たからもの” にまつわるエピソードを紹介するシリーズ企画。
お稽古場ではなかなか見えない先生方の「素顔」を、少しだけお伝えしていきます。

今回は、能楽/謡・仕舞コースの 村岡 聖美(むらおか・きよみ)先生です。
クールな袴姿がカッコいい村岡先生に、ご自身の “キッズ時代” について文章をお寄せいただきました。


とにかく古いものが好き。能面の絵を描く中学生

— お稽古をはじめた時期、きっかけを教えてください。

私は伝統芸能と全く無縁の家に生まれ、大学生のときに入った能のサークルでお稽古を始めました。能と出会ったきっかけは、高校生の時に読んだ『風姿花伝(ふうしかでん)』です。古文や漢文が好きで、偶然、教科書に載っていた世阿弥の文章に不思議な魅力を感じ、そこから能という芸能に興味を持ちました。当時は能を実際に観る機会もなかったのですが、大学に入学すると、たまたまサークルに勧誘され、「お能を自分でやるサークルがあるのか」と驚いた記憶があります。それまで、習い事はピアノと絵画教室くらいしか経験がなく、初めて出会う和の世界が新鮮で、着物や袴を着られるのも純粋に嬉しかったですね。良い師匠、良い仲間に恵まれ、四年生の時には『羽衣』という能のシテを舞わせて頂きました。皆で一つの舞台を作り上げていくことに夢中で、舞台を終えた後に号泣したことも今となってはよい思い出です。
小中学生の頃は絵を描くのが好きで、これは偶然なのですが、能(小面)の絵や平家物語の「敦盛最期」の絵を描いたこともあります。史跡や古墳も大好きで、とにかく古いものが好きな子供でした。


photo:(左)舞台前の楽屋にて (右)初シテ『羽衣』 撮影:辻井清一郎


能は日本の美しさが詰め込まれた“宝物”

— なぜ、いままで続けてこられたとお考えですか。その魅力について教えてください。

私はどちらかというと不器用で運動も苦手、根っからの文化系だったので、自分の身体を使って表現することは苦手でした。自分でも、なぜいままで続けてこられたのか不思議なくらいなのですが、能と離れたいと思ったことは一度もありません。自分が出来なくて悔しい思いをすることはいくらでもありますが、能そのものを好きな気持ちは年々強くなっているようにも思います。
私はもともと古典作品が好きだったこともあり、その登場人物になりきって世界観を表現することに特に魅力を感じています。最初は極端なまでにシンプルな型や難しい詞章に戸惑うこともありましたが、その意味が分かってくると、美しい言葉や表現が本当に心に染み入る時があります。詞章だけでなく、謡の節や面・装束など、日本人が美しいと思ったものがたくさん詰め込まれた宝物のようにも思えます。大昔に生きた自分たちの御先祖様が何を考えて、何を感じて生きていたのか、日本人が長年かけて育んできた美意識を身近に感じられるのも、能の魅力なのかなと思います。

想像力を働かせ、役になりきることで見えてくるもの

— お稽古に励んでいる子供たちへメッセージをお願いします。

最初からなんでも上手にできる人はほとんどいません。私自身、今でもよく失敗しますし、自分が嫌になることもたくさんあります。失敗を反省することはもちろん大事ですが、いつまでも引きずらず、一度失敗したことを次に生かす方が大切だと思います。
お稽古の時は失敗を恐れず、思い切りやってみてください。そして、自分の役がどういうものか、できる限り想像してみてください。何もない舞台の上ですが、役になりきると、きっと見えてくるものがあると思います。[寄稿]

 
photo:(左)み絲之會第5回公演 仕舞『東北キリ』(2020年1月 於:セルリアンタワー能楽堂)
(右)くらき蝋燭能『六浦』(2020年11月 於:久良岐能舞台) 撮影:国東 薫(いずれも)


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