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2017.03.31

アーツマネジメント講座2016 講座⑨『会計の基礎を身につける~芸術活動を継続するために』12月3日レポート

お金の出入りを把握することは、公演等を実施する上で最も重要な実務。
講座9では、田坂公さんを迎えて、約4時間にわたる集中講義で、継続的に活動を続けていくために不可欠な「会計」について、基礎から学びました。

・芸術活動と会計5つのポイント
①仲間同士で情報を共有するために
規模の小さい団体や、法人格をもたない任意団体では、「経費ばかりかかって税金を払うほど利益は出ていないので、会計処理は厳密でなくてもよいのでは?」と考えがち。
しかし、法人格の有無にかかわらず、一緒にイベントや公演をつくる仲間や関係者に対して会計報告ができるようにすることは必要です。
チケットをいくらで売るか、会場費はいくらかかるのか、お金の出入りの記録をつけることは、芸術活動を行う上でも最低限の実務です。

②税務との関係
私たちには納税の義務があります。
公演の際に入場料を取るならば、その収入から税法上で認められている経費を差し引いたものを所得と言います。この所得に、税金がかかります。
「利益が出ていない小規模な活動である」ということは、このような収入と経費をきちんと計上した上で言えること。なので、法人化していない組織でも、公演などの活動をするならば、お金の出入りは報告できなければならないのです。
※なお、売り上げが1千万円以上の場合は、消費税を支払う義務が生じます。

③助成金や支援を受けるために
法人化していない経済規模の小さい集団だからこそ、支援を得るために会計記録が重要な場合があります。
芸術活動を支援してくれるかもしれない相手(スポンサーや助成金など)に対して、一般的な会計ルールで財政状況を示すことができなければ、支援対象に選ばれることは難しいです。
とりわけ、税金を財源とする公的支援(助成金)や、税制優遇を得て行われている助成団体(民間の助成金含む)などの場合は、適切な会計処理ができていることが、支援対象となる前提条件であることがほとんどです。

④融資を受けるために
公演などは長い準備期間を必要としますが、入場料収入はチケット販売が始まらないと入ってきません。助成金などを得ても、公演終了後にしか入らないことが多いです。
公演前に、現金収入がいくら入る予定か、そして準備期間中に支出しなければならない経費がいくらあるのか、その資金繰りはとても重要。公演規模が大きければ、個人の立替や団体の資金では難しい場合もあり、金融機関などから融資を受ける必要性も出てくるでしょう。
そのためにも、日常的に適正な会計処理がなされていることは、最低条件になります。活動規模を大きくしていくためにも、日常的な会計は必要不可欠です。

⑤会計情報が将来の活動の見通しを立てる大きな根拠になる
活動実績をお金の出入りから把握することは、今後の活動の規模を考えたり、そのために必要な備品への投資など、将来に向けた経営上の決定・判断をする上で、欠かせない材料になります。

こうした、会計の必要性をあらためて学んだのち、講座の後半では、より具体的に、お金の取り扱い方、簿記のイメージ、決算についての講義。
芸術活動用の通帳と個人の通帳を分ける現金出納帳をつける、などの基本的なこと。
それから、簿記の目的である記録と報告のための決算書(財務諸表)の種類について。
貸借対照表」(B/S)と、「損益計算書」(P/S)の関係性や、決算の予備手続きから本手続きを経て、財務諸表を作成するまでのプロセスについても解説。
また、複式簿記の「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」の考え方を整理しながら、試算表のチェックの仕組みも学びました。

最後は、有名企業の決算書(公開されているもの)を例に、その財務諸表を見ることで企業の違った一面が見えてくることを解説。
ある実演芸術団体の決算書の事例を取り上げ、その団体の経営状態を分析し、決算書の見方について理解を深めました。

会計は、自身のためだけでなく、相手に活動を知ってもらうための説明材料。
会計担当者だけでなく、その活動に関わる全員がきちんと活動状況を知ること、すなわち会計書類を読む力を身につけることも大切。

適切な処理を身につけて、活動状況を説明できることは、その活動の意義を示すことにもつながります。
社会のなかで芸術活動を行う上で、欠かせないですね。

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講座8 会計の基礎を身につける~芸術活動を継続するために

【講師】田坂 公(福岡大学商学部教授)
【日時】平成28年12月3日(土)13:30~17:45
【会場】沖縄産業支援センター

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