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インタビュー「あの先生の “たからもの”」梅屋巴先生(小鼓・太鼓)

2021.02.02 コラム

先生たちの “キッズ時代” や “たからもの” にまつわるエピソードを紹介するシリーズ企画。
お稽古場ではなかなか見えない先生方の「素顔」を、少しだけお伝えしていきます。

今回は、長唄/囃子[小鼓・太鼓]コースから 梅屋 巴(うめや・ともえ)先生です。
いつもおしとやかな巴先生に、ご自身の “たからもの” について文章をお寄せいただきました。


テレビ番組で見て「かっこいい!」。始めたころは楽しい思い出ばかり

― お稽古をはじめた時期、きっかけを教えてください。

母が歌舞伎好きだったので日本舞踊が身近な存在で、5歳のころからお稽古をしていました。一人で踊るのも、お友達や先輩のおねえさんと一緒に踊るのも楽しかったことを覚えています。
中学3年生のとき、よく見ていた邦楽番組でたまたま小鼓の特集があり、「これ、かっこいい!」と思いました。楽器そのものに魅せられたのか、今思えば、そのとき演奏していた方がかっこよかったのか・・・・・・。父の知人に先生を紹介していただきました。先生のお宅がバスで3停留所という近さだったのもご縁があったのだと思います。

6月に始めて、8月にはさっそく浴衣浚(ざら)いという小さな発表会に、(これも偶然)今回Bクラスのみんなが練習している「越後獅子」で出演しました。そのころのお稽古やお浚い会は、楽しかった思い出しかありません。

たくさんの時間とたくさんの人たちの思いがこもった太鼓

― 先生の “たからもの”を教えてください。

邦楽囃子方は、笛を専門に演奏する笛方以外は、小鼓だけでなく大鼓や太鼓、さらに蔭囃子(かげばやし…歌舞伎などの舞台で、お客様からは見えない黒御簾という場所で演奏する囃子)で使うすべての打楽器を演奏できなければなりません。初舞台で使わせていただいた太鼓を、5年前に私の先生が亡くなったあと、ご遺族と先輩のご厚意でお譲りいただきました。胴といって二枚の皮にはさまれたところには、漆を塗った上に美しい金蒔絵がほどこされています。
何百年も前にこれを作った職人さん、その後、これを使ってきた人たち、そして、私に使わせてくださった先生。たくさんの時間とたくさんの人たちの思いがこの太鼓にはこもっています。演奏するときはいつも初心を忘れないよう心がけていますが、特にこの楽器を前にすると初舞台のときを思い出します。今でも先生が見守ってくださっているようで、これからも大事に大事に使いたいと思います。


photo: (左)初舞台のとき (右)胴の金蒔絵が美しいたからものの太鼓


簡単には響かないところも、また魅力。まずは小鼓と仲良しに


― お稽古をがんばっている子供たちに向けて、メッセージをお願いします。

思うように音が出ない、なかなか覚えられない、発表会が近づいてドキドキする・・・・・・いろいろな悩みがあるかもしれません。でもそれは、ほかでは決して味わうことのできない特別な体験です。みなさんがお稽古している小鼓は、日本人が作り上げた独自の打楽器です。簡単にいい音が出ないところが魅力でもありますから、まずは小鼓と仲よしになってください。大切に思う気持ちに、楽器はきっとこたえてくれます。
「キッズ伝統芸能体験」の囃子コースを選んでくれたみんなが、テレビを見てかっこいいと思った私のように、小鼓を好きになってほしい! 大きくなっても日本の音楽を大切に思ってほしい! 講師はみんなそんな気持ちでお稽古に参加しています。迷ったときにはいつでも相談してくださいね。[寄稿]


photo: 最近の演奏より(ライブハウスなどでも日本の音楽を伝える。普段は正座だが、ここでは椅子に座って。)
撮影: 中高生のときのご友人


*キッズ伝統芸能体験 講師紹介(プロフィール)はこちらから