2020.12.28

インタビュー「あの先生の “たからもの”」山勢麻衣子先生(山田流箏曲)

先生たちの “キッズ時代” や “たからもの” にまつわるエピソードを紹介するシリーズ企画。
お稽古場ではなかなか見えない先生方の「素顔」を、少しだけお伝えしていきます。

令和2年の最後にご紹介するのは、三曲/箏曲(山田流)コースの山勢 麻衣子(やませ・まいこ)先生です。
きりりと爽やかな麻衣子先生に、ご自身の”たからもの”について文章をお寄せいただきました。


保育園の先生に憧れて。小さなかわいいお弟子さん

— お稽古を始めた時期ときっかけを教えてください。

保育園の一番上のクラス、5歳の時にお箏のお稽古を始めました。保育園の担任の先生が山田流のお箏を習っていらっしゃって、いま思えば、その先生のことが大好きだったので憧れたのではなかろうか……と記憶しております。
両親共に公務員の家庭でしたから未就学の子供を教えてくださる箏曲の先生に心当たりなど無く、ごくごく ご近所の山勢先生へ母が飛び込みでご相談したのがきっかけです。当時、東京芸術大学に教えに行っていた当代山勢(六代 山勢松韻)が稽古をしてくれることになりました。
先代の五代山勢も当代も、当時は専門家にしか稽古をしておりませんでしたから、小ちゃな子供相手で特別扱いしてもらい、お稽古の度にお菓子を少しお土産に貰って帰ったりしてお稽古はとても楽しかったです。

先代から弾き続ける箏と、プロ野球界の“鉄人”から贈られた言葉

— 先生の“たからもの”と大切にしている理由を教えてください。

ひとつは、サイン入りの柱箱(じばこお箏の上に立てるブリッジを収納する箱)。一昨年、お亡くなりになられた伝説のプロ野球選手で元広島東洋カープの鉄人・衣笠祥雄(きぬがささちお)さんが書いてくださいました。
両親も祖父母も野球が好きで、記憶の無いころから野球のシーズンはプロ・アマチュア問わず家族でテレビで観戦していました。小学校の低学年のころにはグローブを買ってもらい嬉しくて、父とキャッチボールをしていました。女子としてはちょっと変な子ですね。
NHKでラジオの録音があった時に、スタジオの前で別番組の収録にいらした衣笠祥雄さんと行き合い、子供の頃からファンの私は思わず「サインくださいっっ!」とお願いしました。サインください、としか申し上げなかったのに座右の銘である『忍耐』の二文字も書いてくださり、その時「衣笠さんの目には、今の私、これからの私には忍耐こそが必要なこととお見えになったのだなぁ」と思いました。衣笠さんも鉄人を貫かれるためには、大変な忍耐をされたのだと思います。私もそれに学びたいと思っています。


photo: 大好きな衣笠祥雄選手のサイン入り柱箱

もうひとつは、五代山勢・当代山勢の使用楽器。銘は此君(しくん)です。大切な楽器は他にも数面あります。どれも先代から弾き続けている楽器で、最近、私も大事な演奏の時には弾かせてもらえるようになりました。楽器それぞれ響きが違いますが、此君はシャープでカッコイイ音がします。洗練された音です。
箏は桐の木でできています。桐製品(箏)は寿命が100年位で、ヴァイオリンのように塗料などを塗らずに表面を焼いて強度を出しているために、楽器としての寿命はそう長くはありません。将来、此君を演奏会で使うことが出来なくなってしまう日が来ても、舞台ではない場所で大切に弾き続けたいと思っています。

  
photo:先代から弾き続ける箏

発見? それとも忍耐力?!  お得なお試しチャンスで自分のものに

— お稽古に励んでいる
子供たちへメッセージをお願いします。

「キッズ伝統芸能体験」を通して初めてのお稽古を始めたことが、自分の希望だった子供たちは勿論のこと、お家の方の希望でやむなく始めた人も、「キッズ伝統芸能体験」の講習期間は短いですからまずは最後まで続けてください。自分では思いもしなかった発見があるかもしれないし、最後までやったけどやっぱりつまらなかった時には、それこそ忍耐力が付いているでしょう。
お互い様に、“合う、合わない”があるのは避けて通れないことですし、そうかと言って、やってみないことには自分に合うのか合わないのかも分かりません。どのジャンルを選択したにせよ、専門家に期間限定で教えてもらえることは“お得なお試しチャンス”だと思います。この機会に有効活用して、そして最後まで続けて、個人で出演するのはなかなか難しい大きな舞台を是非経験してください。[寄稿]


photo: 「山勢麻衣子演奏会」(2020年11月 於:紀尾井ホール) 

*キッズ伝統芸能体験 講師紹介(プロフィール)はこちらから