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インタビュー「あの先生の “たからもの”」鳳聲千晴先生(篠笛)

2020.11.27 コラム

先生たちの”キッズ時代”や”たからもの”にまつわるエピソードを紹介する新企画。
お稽古場ではなかなか見えない先生方の「素顔」を、少しだけお伝えしていきます。

今回は、長唄/囃子[篠笛]コースの鳳聲 千晴(ほうせい・ちはる)先生です。
楚々としたお姿が印象的な千晴先生に、ご自身の”たからもの”についてお話を聞きました。


踊りよりも、笛の音にひかれて

— お稽古を始めたきっかけを教えてください。

昔から“6歳の6月6日”に芸事を始めると良いと言われていますので、その年、母が続けていた日本舞踊を私も始めたんです。でも、発表会のとき、伴奏である地方(じかた・日本舞踊の演奏者)の先生の笛の音がとても素敵で、踊っていても音色のほうに気を取られてしまいました(笑)。
中学生の時、「私も吹いてみたいな」とお稽古に伺ったのが始めたきっかけです。
小さい頃は、日本舞踊のほかにも習いごとをたくさんしました。エレクトーン、そろばん、書道、スイミング……、水泳は苦手でしたね。中学生の時は、自分の意志で吹奏楽部に入って管楽器のクラリネットを吹いていました。そう考えると、やっぱり私は“笛”の音色が好きなんだと思います。

江戸時代からの想いを受け継ぐ能管と筒

— 先生の“たからもの“を教えてください。

師匠の二代目・鳳聲 晴から譲り受けた能管(のうかん・日本の横笛)です。お名前をいただいて一人前になってからのこと、特にきっかけはなかったのですけれど巡り合わせでしょうね。「これを使ってみなさい」という感じでいただきました。能管は、古いほど良いものです。古管(こかん)と呼ばれ、修理を重ねながら師匠から弟子へと受け継いでいきます。実際には、さまざまな事情で次の代へきちんと渡せないことも多いため、とても貴重です。私が使用しているお笛は、江戸時代のものと言われています。笛は吹き込めば吹き込むだけ音が鳴ってくるものなので、舞台の時に大切に使っています。
また、能管を入れる筒は、家元から譲り受けました。蒔絵がしてあるものです。お二人ともすでに亡くなっていますので、師匠の能管と家元の筒、これらと一緒に舞台に立つと守ってもらっている感じがします。いつまでも頼っているようでもありますが(笑)、楽器に宿る想いとともに一生大切にしたい“たからもの”です。


photo: それぞれ譲り受けた家元の筒(左)と師匠の能管(右)

なんといっても美しい音色が篠笛の魅力

— お稽古を始める子供たちへメッセージをお願いします。

篠笛は、末永く楽しんでいただけるものですので大切にしてください。ただ、この楽器は音を出すまでが大変です。リコーダーとは違って吹けば出るものではありません。でも、諦めないでお稽古を続けると、ある日、突然ぽっと出たりするものです。
最初のお稽古は、とにかく時間をかけて音を出す練習をしますので、ここが肝心。何よりも大切なのは“諦めないこと“です。
篠笛の魅力は、やっぱり美しい音色! 笛の音色は人の心に響きます。一人で吹いても、皆さんと合奏しても楽しむことができる楽器です。篠笛を吹く楽しさを知って、日本の伝統芸能をもっと身近に感じていただけるとうれしいです。[談]


photo: メメントC公演「女人往生環II」(2019年)より

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