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インタビュー「あの先生の “たからもの”」望月庸子先生(小鼓・太鼓)

2020.12.22 コラム

先生たちの “キッズ時代” や “たからもの” にまつわるエピソードを紹介するシリーズ企画。
お稽古場ではなかなか見えない先生方の「素顔」を、少しだけお伝えしていきます。

今回は、長唄/囃子[小鼓]コースの望月 庸子(もちづき・ようこ)先生です。
いつも元気で明るい庸子先生に、ご自身の “たからもの” についてお話を聞きました。


ちんどんやさんに感激! 朝から晩まで太鼓を打っていたい

— お稽古を始めたきっかけを教えてください。

幼い頃、ちんどんやさんを見て感激していたと、父がよく言っていました。その頃から打楽器に魅せられ、幼稚園のときには行進曲のドラムをちょっと打ってみたり、小学生になると盆踊りの太鼓を始めたり、とにかく太鼓が好きだったことをよく覚えています。中学生のときに、助六太鼓(日本発の和太鼓のプロ集団)の演奏を見て、もう大感激! そのグループに入って湯島天神の太鼓コンクールで最優秀賞をいただいたりしました。助六太鼓の先輩が邦楽の道に進んだので、私自身も鼓をやってみたいと思い、この道を選んだというわけです。
もう「朝から晩まで太鼓を打っていたい!」と思うくらい太鼓が大好きでした(笑)。文京区の下町育ちということもあり、小さい頃から祖母や父が小唄の三味線を弾いている環境でお祭り一家。お隣が日本舞踊の先生で、3歳からお稽古場に通っていたので、身体の動きやリズムの取り方などはお三味線を弾きながらお稽古してくださったことが基礎になったものと感謝しています。いまだに、盆踊りで調子の外れた太鼓の音を耳にすると歩けませんし、身体も動かない。「このリズムでは踊れないわ」なんて気になってしまいます(笑)。


photo: お祭りでの熱演の様子が雑誌に掲載

良い音を鳴らすには、50年かけて”皮”を育てる

— 先生の“たからもの”を教えてください。

わたしの使っている楽器のひとつで、胴に栗の蒔絵をほどこした小鼓です。小鼓はすぐに鳴るものではなく、皮を大切に打ち込み続けることで、よく鳴ってくれるように自分でこしらえていくものです。「50年は打ち込むもの」などと言われますが待っていられませんね(笑)。この皮は打ち込んで10年ですが、なかなか可愛い良い子に育ってくれています 。大切な小鼓のひとつで、わたしのたからものです。
大太鼓の基礎を習った先生より、女の子が大太鼓を続けるには限界があるからと “小鼓・しめ太鼓” をすすめられました。始めてみると、「あぁ、これは面白い!」と思えて現在に至ります。実は、いまでもなかなか思うように上手くはできません。楽器を育てながら、自分も一生、お稽古を続けていきたいと思っています。


photo: 栗の蒔絵がかわいらしい小鼓

どんなことでもいい、やり遂げた経験が自分の力になる

— お稽古を始める子供たちへメッセージをお願いします。

できない、ということは絶対にないので、できるようになるまでお稽古を積み重ねて、自分との闘いと思ってがんばるしかありません。
健康なら良いという感じでのびのびと育てられてきた私も、小学5年生のときに勉強がよくできなくて、近所の塾の先生に教えていただきました。その先生に「できなくても、なにしろこの厚い本(参考書)を1冊やり遂げなさい」と言われて、とても辛かったことを記憶しています。でも、達成したときに自分が変わったんです。やってやれないことはないことを、その先生から学び、その経験がさまざまな場で活きています。
皆さんにとって、今回の体験は、鼓のお稽古以外のたくさんのことにも繋がるはずですので、ぜひ、あきらめないで、こつこつと努力を続けてほしいです。[談]

 
photo: 最近の舞台より (左)前列左端でしめ太鼓を担当(2019年) (右)小鼓の演奏

*キッズ伝統芸能体験 講師紹介(プロフィール)はこちらから