GEIDANKYO 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協] 芸能花伝舎 沖縄県

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2016.03.31

アーツマネジメント研修派遣 研修修了報告会(2月2日)レポート[第1部:喜舎場氏、大野氏、北住氏、上原氏]

No_177休憩をはさんで、第1部後半は喜舎場梓さんの報告から。

喜舎場さんは劇団TEAM SPOT JUMBLEの制作をされています。

劇団運営や公演制作の実務を学ぶことを目的に、青年劇場で約4カ月間に及ぶ研修を行いました。

喜舎場さんは、沖縄県内に演劇の制作者が少ないことによる制作ノウハウの不足や、演劇自体があまり浸透していないことによる不十分な公演回数、また劇団の資金調達の困難さなど、たくさんの悩みを抱えていました。

こういった課題に対する解決策を学ぶべく、今回の青年劇場での研修に臨まれました。

喜舎場さんが研修に行った青年劇場は、劇場公演から全国公演、学校公演など年間を通してたくさんの公演を重ねている老舗の劇団ですが、現在でもスタジオというミニマムな空間で表現方法の研究を重ねている点が強く印象に残ったそうです。

喜舎場さんはこれを参考に、研修から戻ってから稽古場で「Keikobar」という公演を2カ月に1度行うようになりました。

劇場ではない不便な環境で試行錯誤を重ねながら、劇団員総動員で環境づくりを続けることで、団員の意識も随分と変わってきたそうです。

また、喜舎場さんは研修から戻ってすぐに、助成金の獲得に着手しました。

沖縄県文化振興会の平成27年度沖縄文化活性化・創造発信支援事業の申請を行い、採択を受けて実施しているのが「演劇を活用したワークショップ ファシリテーター養成講座」です。

劇団TEAM SPOT JUMBLEでは、4年ほど前からこの演劇を活用したワークショップで、学校現場などを回っていました。

沖縄では実演家が多く、アウトリーチなどの機会がどんどん増えていることに対して、ファシリテーターの技術を学ぶ機会が少なすぎるのではないかと喜舎場さんは考え、ファシリテーター養成講座の実施を決意したそうです。

今後の活動や事業の活性化のために、資金調達についての勉強を重ねたいと語る喜舎場さん。

そのためには、事業や公演内容など、自分たちが行っていることを認めてもらえるように説明する力、発信する能力が制作者に問われていると感じているそうです。

また、研修で得たネットワークが財産となっているとのこと。

今後も青年劇場の人々や東京で出会った制作者、研修者の仲間たちとも一層連携を深めていきたいそうです。

またそのネットワークでひとつの作品を作っていきたいという“野望”も聞かせてくれました。


No_215続いての報告は大野順美さん。

大野さんは、今年創立79周年を迎える老舗劇団、文学座で約半年間の研修を行いました。

沖縄県が観光立県として確立しつつある中、国立劇場おきなわをはじめとする県内各市町村の文化施設においてたくさんの公演が行われるようになったのに対して、舞台制作者の人手不足を常々感じてきたそうです。

大野さんは文化施設での勤務を経て、現在は独立して法人化されていますが、民間組織の継続的な運営や経営等について学びたいと考え、今回研修に行かれました。

大野さんが文学座での実務研修を通して学んできたことは、「劇団の組織経営」「俳優のマネジメント」「公演制作」の3つに大別されます。

その上で、文学座の組織や運営体制などの基本事項、劇団の歴史、予算や契約、内部規定などについてもレクチャーを受けました。

研修の後半は、宮本研作、高瀬久男演出による社会派の大作、『明治の柩』という作品の公演に携わりました。

公演は研修最終月の6月でしたが、企画段階から顔合せ、本読み、けいこ、技術打ち合わせ、仕込み、リハ、公演までの一連の進行を見ることが出来たそうです。

けいこを進めるにつれて座組みも団結を強め、文字にすぎなかった戯曲の作品世界が立体的に浮き上がってくるのを間近に感じることができたのが大きな財産となったと語っていました。

研修終了後は、組踊をはじめとする琉球芸能の普及に一層熱心に取り組まれています。

そのひとつとして、2015年11月には文化庁の国際芸術交流支援事業の一環で、日本とブラジルの修好120周年記念の琉球舞踊公演の制作を担当されました。

ブラジルはサンパウロとカンポ・グランデを訪れ、琉球舞踊家と地謡、三線奏者、スタッフの総勢約20名で公演とワークショップを行いました。

現地に行くまではブラジルの人が琉球芸能を受け入れてくれるのか不安だったそうですが、蓋を開けてみれば出演者が出てくるなり万雷の拍手、最後には総立ちの大変な熱狂ぶりだったとのこと。

大野さんは、以前から取り組んでいた琉球芸能の普及に加えて、各組織や別業界との連携を今後の目標に掲げています。

また、今回のアーツマネジメント研修派遣の研修修了者の仲間たちとも連携して、舞台制作に携わっていきたいと考えているそうです。

最後に、ジャンルを超えて意見交換や情報発信ができるような場がもっとあればよいのではないかという提言で報告を終えました。


No_280次の報告は北住景子さんです。

北住さんは劇団わらび座で研修をされました。

わらび座は秋田県にわらび劇場という専用劇場を持ち、年間を通して常設公演を行っています。

また、芸術とリゾートの共演を打ち出し、わらび劇場を中心にたざわこ芸術村を展開。温泉、工芸、郷土料理など芸術鑑賞にとどまらないエンターテインメント施設を運営しています。

3ヶ月の研修期間中、2つの常設劇場の運営業務、舞台制作業務、全国ツアーに同行しての舞台監督助手など、様々な実務に携わった北住さん。

特に、営業部での研修で目の当たりにした、わらび座の組織的な営業力とそのアプローチがとても勉強になったそうです。

次に、研修後に取組んだ2つの事例について報告してくれました。

北住さんが以前から関わっていた現代版組踊「肝高の阿麻和利」の活動が16年目に入り、当初つくった衣装や小道具にほころびが出てきたということで、資金を調達の相談があったそうです。

そこで、新しい資金調達として注目されているクラウドファンディングに挑戦。

実施期間は3カ月間、目標金額は実際に修繕にかかる80万円を設定し実施しました。

結果は約100万円近くの資金を獲得し、目標を達成することができました。

ただ「お金をください」と言うのではなく、その資金は何に使われるのか、どう伝えれば気持ちよくお金を出してくれるのかというところをしっかりと考えてプログラムした点が成功の要因のひとつではないかと北住さんは分析しています。

また、沖縄出身のバレエアーティスト、緑間玲貴さんの自主公演にも企画から携わり、制作や広報を担当されました。

1月には南城市の「ガンガラーの谷」という大きな洞窟で2日間に亘って公演を行っています。

北住さんは、今回の公演を通して、沖縄の公演における3つの通説の検証を行いました。

検証①:沖縄では3,000円以上のチケットは売れない
検証②:沖縄の人は、開演時間に遅れてくる
検証③:沖縄は、ギリギリにならないとチケットが動かない

自主財源による公演でしたのでチケット代を高く設定する必要がありましたが、結果的にS席7,000円/A席5,000円のチケットが完売となりました。

また、ガンガラーの谷特設ステージの都合上、開演30分は会場内には入れないという案内を予約者全員にした結果、2日間で遅れたのは1組だけだったそうです。

しかし、県内からの予約はまだ駆け込みが多かったとのこと。

今回のチャレンジで、通説のうち①と②は覆すことが出来ました。

今後もいろいろトライ&エラーを重ねながら、興行として成立させうる舞台芸術を目指して、成功事例を積み重ねていきたいと意気込みを語ってくださいました。


No_305さて、第1部最後の報告者は上原航一さんです。

上原さんは、旅行会社沖縄ツーリストの現職者、まさに観光の分野から研修に挑戦されました。

独立行政法人日本芸術文化振興会 国立劇場公益財団法人淡路人形協会 淡路人形座の2カ所での研修を経て、今取り組んでいることについて報告してくれました。

上原さんはお父さんが琉球古典音楽の実演家であることから、これまでご家族が出演する古典音楽や組踊の公演を観る機会が多々あったそうです。

しかし、沖縄ではこれだけ伝統芸能が盛んでありながら、訪問する観光客が鑑賞できる機会はとても少ないことに疑問を感じていました。

近隣の韓国や台湾、中国のように、観光素材のひとつとして伝統芸能を鑑賞できるように発展させたいと考え、今回の研修派遣に応募されました。

国立劇場では、歌舞伎や文楽といった伝統芸能の集客方法やセールス面を中心に研修されました。

東京都内や近郊自治体の公民館、観劇サークルなどを対象とした営業、大学生や専門学生を対象に特別料金を設定したキャンパスメンバーズ契約の営業、地方の旅行会社や都内宿泊施設などへのDM発送、伝統芸能鑑賞の普及を目的とした鑑賞教室の営業など、芸能鑑賞のセールスの範囲の広さを実感したそうです。

一方、淡路人形座は観光客を主な対象としているため、近郊の観光施設と協力し、当日や前日の各観光地でのチラシ配布、近郊ホテルや旅行会社へのDM発送などの営業活動を通して集客につなげていたとのこと。

研修修了後、上原さんは沖縄の観光仕入れ業務の一部を担当する着地型観光WEB戦略本部という部署に転属になりました。

マリンレジャーや観光施設、世界遺産群と同じように、伝統芸能も沖縄観光資源のひとつに挙げられるよう、観光面から伝統芸能という分野を発展させたいと考えているそうです。

将来的には、沖縄ツーリストが発行協力している県内のイベント・公演情報のフリーペーパー『ぴらつかこよみ』に掲載されている情報を、上原さんの所属する部署が運営しているWEBサイトの中でも発信していきたいという展望を語ってくれました。

また、先ほど北住さんの報告にあったバレエ公演と、公演の会場となるガンガラーの谷周辺の観光バスツアーをパッケージにした商材を、上原さんを通じて沖縄ツーリストと北住さんが共同で開発、販売。研修者同士の連携がひとつの成果となりました。

最後に上原さんは、観光業界と舞台芸術業界の相互理解と歩み寄りを提案。

舞台芸術の世界ではなく、観光業界にいる上原さんだからこそできる役割により一層の期待がかかります。  



第2部討論の様子はこちら

第1部報告の前半はこちら



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