GEIDANKYO 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協] 芸能花伝舎 沖縄県

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2017.03.31

アーツマネジメント講座2016 講座13『そのときどうする?~出演者の傷病対応』1月17日レポート

講座13は、実演芸術に携わる人々のヘルスケアについて。
NPO法人芸術家のくすり箱 理事 兼 事務局長をつとめる小曽根史代さんをお招きし、出演者のヘルスケアにおける制作者等の役割についてお話しいただいきました。
また、アスレチックトレーナーの湯浅政紀さんから、救急時の対応についての実技演習も。

●芸術家のヘルスケアの現状と、NPO法人芸術家のくすり箱の活動について(小曽根 史代)
芸術のくすり箱では、ダンサー・音楽家・俳優・スタッフ等の芸術家のヘルスケアをサポートし、芸術家と医師・治療師・トレーナーをつなぐ取組を進めています。救急対応や怪我の処置はごく一部であり、大切なのは日々のトレーニングやコンディショニングから関わり、怪我をしないような身体づくり、才能を伸ばすトレーニング。「芸術家の元気が、社会の元気」というモットーの元に、芸術家の創造環境をサポートすることを目的に設立しました。

日本で芸術家を取り巻く環境を考えてみましょう。
スポーツ界では、JISS(国立スポーツ科学センター)やNTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)等、トップレベルの選手に対して手厚いサポート体制が近年整ってきており、オリンピック・パラリンピックでのメダル数増加など、効果が上がっています。
一方、芸術家に対しては、プロとしての継続的な活動をサポートする体制は、現状ではありません。
芸団協が1974年から5年ごとに実演家を対象に実施しているアンケート調査『芸能実演家・スタッフの活動と生活実態調査』(最新2015年度版)でも、仕事上の怪我の治療費は、自分で負担しているケースが非常に多いのが現状です。ダンス系は90%、演劇関係では65%が自分でケアしているという調査結果がでています(演劇では労災の対応をしている団体もあり)。

一般企業であれば、社員の仕事上での事故やケガは労災が適用されますが、芸術家においては、心身のケアは本人任せで、常にギリギリの状況で活動しています。芸術家がプロフェッショナルとして継続的に活動を続けていくための身体づくりは、自分任せではなく、組織あるいは業界として、ベースをつくる必要があるのではないでしょうか。

また、公演の現場には、医療の専門スタッフがいないことがほとんど。しかし、公演現場は日常生活や稽古よりもリスクが高いことを認識しておきましょう。
緊急時にはその場にいる公演スタッフ、劇場スタッフが対処することになります。万が一を起こさないことが大事ですが、万が一のために、公演の安全管理とともに「傷病者の対応」にも備えてほしいと思います。
適切な処置によって早期回復できることは、芸術家にとって大きな意味を持ちます。

劇場スタッフの危機管理マニュアルとしては「劇場等演出空間の運用及び安全に関するガイドライン*」が2017年度にリニューアルされるので、ぜひ新しいものをダウンロードして読んでください。
また、芸術家のくすり箱が2016年に発行した「公演救急ガイド**」にもぜひ目を通して、事前の準備と緊急時の対処法の確認を現場で徹底してほしいと思います。

●「公演救急ガイド」4つのポイントと実践 (湯浅 政紀)

講座の後半は、湯浅さんから、救急時の対応について、実技演習を行いました。
ポイントは、次の4点。本番だけでなく、稽古場でも起こり得るので、主催者・企画者や、制作者も、演者や他スタッフとともに、全員が救急対応の認識を備えておくことが重要です。

①事前準備
まずは、備えるべき情報・ものを確認すること。
会場となる施設の担当者とともに施設の救護体制を確認し、作品中のケガのリスクのあるシーン・セットについて把握しておくことが必要です。
また、施設内または近隣のAED設置場所や、救急車を呼ぶ手順、水や氷を確保できる場所の確認も重要。
応急処置グッズ、医療・保険機関の緊急連絡先リスト、出演者・スタッフのメディカルチェックシートなども、「公演救急ガイド」を参考に事前に準備しておきましょう。

②救急車を呼ぶ場合の判断
一番大切なことは、意識があるかどうかの確認。
意識がなければ、すぐに救急車を呼びましょう。
また、呼吸停止、多量出血、失禁など、ひとつでも当てはまるものがあれば、これもすぐに救急車を呼ぶのがよいです。

③RICE処置
捻挫や肉離れ、打撲などへの応急処置として、Res(t 安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)のやり方を演習。
水と氷、ビニール袋、ラップなどで、アイシングは簡単にできます。

④熱中症
軽症でも短時間で悪化し、重症化すれば死の危険もある恐ろしい症状。決して患者から目を離してはいけません。
屋外だけでなく、ホールや稽古場など、屋内でも起こり得るので注意が必要です。

実技を終えて、受講者からは、「こうした知識・実践は、舞台に関わる施設職員全員にとって大事なこと。またぜひ機会をつくってほしい」との要望もありました。


*「劇場等演出空間の運用及び安全に関するガイドライン」 劇場等演出空間運用基準協議会 http://www.kijunkyo.jp/
**「公演救急ガイド」 芸術家のくすり箱 http://www.artists-care.com/

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講座13 そのときどうする?~出演者の傷病対応

【日時】平成29年1月17日(火)18:00~20:30
【会場】沖縄県男女共同参画センターてぃるる
【講師】小曽根史代(NPO法人芸術家のくすり箱理事・事務局長)、湯浅政紀(アスレティックトレーナー/ JUNGLE GYM所属)

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