GEIDANKYO 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協] 芸能花伝舎 沖縄県

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2015.06.12

アーツマネジメント連続講座 講座③『観客をつくり出す-広報・宣伝』5月25日レポート

講座③「観客をつくり出す―広報・宣伝」の1日目は、大阪・いずみホール企画部課長の森岡めぐみさんにお越しいただきました。

沖縄が大好きで、これまで何度も訪れているという森岡さん。

講座の前日には、国立劇場おきなわで行われていた琉球舞踊の公演を鑑賞されたそうで、その繊細さ、奥深さに大変感銘を受けていらっしゃいました。
劇場に向かうため乗車したタクシーの運転手さんに、「国立劇場おきなわ」と「県立博物館・美術館」を勘違いして連れていかれたというエピソードから、交通のアクセスだけでなく、日頃から(その施設の存在を)思いだしてもらえるか、という「心のアクセス」も大切だというお話に発展。
冒頭から考えさせられました。

 DSC08755続いて、今年で開館25周年を迎えるいずみホールの、沿革、活動内容、そして大阪の文化的土壌、大阪における公共ホールの立ち位置についてのお話。
大阪には公立の劇場や音楽ホールが存在せず、文化施設のほとんどが民間によって設置・運営されているそうです。
さすが商人気質の文化ともいえますが、近隣の府県には大規模な公立文化施設が次々と誕生しているなかで、大阪の民間ホールは手を携えてその存在意義をアピールしていく必要性に迫られています。
ここで森岡さんが述べられた「広報の仕事は、芸術活動が世の中の役に立つことを説得していくことから始まる」という言葉は、この連続講座を通して何度も登場している大事なキーワードのひとつです。

 次に、混同しがちな「広報」と「宣伝」の違いについて、クイズ形式で説明。
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丹精込めて育てたゴーヤを、畑の特設売店で売りたいけれど、 誰も通りかかりません。
そこで次のような試みを行いました。

A: 町の広場に面している家の壁に「美味しいゴーヤ、 特設売店で売ってます!」と書いたポスターを貼らせてもらい、代わりにその家の人にゴーヤをひと盛りプレゼントした。

B:町の人気者を訪ねていって「丹精こめた美味しいゴーヤができました!」と話したら、「じゃあ、みんなにも言っておくよ!」とその人が広場にいた人達の所に飛び出して言ってくれた。

(森岡さん作成のスライドより引用)

 さぁ、この2つの試み。皆さんは、どちらが「広報」で、どちらが「宣伝」かお分かりになるでしょうか?

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講座を受講されなかった方も、ぜひ考えてみてください。

 

DSC08777そして話題はいよいよ広報戦略について。

広報戦略を立てるには、自分たちの団体の活動目的を再確認し、明確にすることが重要です。その上で、ターゲットの客層を想定し、それをもとに工程表(スケジュール)をつくっていきます。

ここでは、いずみホールで実際に行われた3つの公演を事例に、それぞれのコンサートの客層がどのように想定され、またどのように広報戦略が練られているのか、具体的にお話しいただきました。いずみホールがアンケート結果を広報戦略にフィードバックしている点も大変参考になります。

 

続いて、配布資料の「広報・宣伝 工程表(例)」を参照しながら、どのような公演を、どのような客層をターゲットにし、どのようなストーリー展開を描きながら広報宣伝をすべきか、受講者各々が自身が関わる場合を想定しながらワークシートに書き込んでみました。発表をお願いした一部の受講者に対しては、森岡さんから広報の戦略や方法について具体的なアドバイスがあり、これもとても参考になります。

この講座の中で繰り返しお話しされたのは、「企画を立てた段階で、広報・宣伝のスケジュールを立てる」ことの重要さ。先を見通して早めに立てたスケジュールは途中でいくらでも変更ができますが、切羽詰まってからではどうすることもできません。

 また、ニュースリリースをつくることの重要性とその活用方法についても、実例に即してご説明くださいました。

リリースをつくることで自身の頭の中も整理され、企画内容が説明しやすくなると同時に、チラシやポスター、SNSなどへの情報の落とし込みも容易になります。山のように届くリリースの中で少しでも目立たせる方法や、対象客層によってアピールする内容を変えるなど、すぐにでも活用できそうなアイデアもいただきました。

 こうした広報・宣伝の担当者には、客層を想定する「観察力」、アイデアを出せる「発想力」、それをアウトプットできる「表現力」の3つの能力が特に重要です。文化施設にも芸術団体にも、芸術活動をすすめる上で、こうした力をもった広報・宣伝に関わる人材がいることはとても大切ですね。

 

さて、後半は、オウンメディア(own media)の活用について。
新聞の発行部数や購読率の低下に見られるように、既存のメディアの力の弱まりを実感されているそうです。その一方、新聞に記事が掲載されるのと同程度の労力で、自分たち自身が広報メディアとなることが可能な時代になりました。すなわち、「オウンメディア(own media)」です。

オウンメディアには、情報誌や会報誌、ニュースレターといった紙媒体と、SNSなどのインターネットメディアの大きく2つに分けられます。

年齢層によっても各メディアへのアクセスのしやすさに違いはあるようですが、チケット販売情報におけるオウンメディアの占有率はここ数年で非常に高くなっているとのこと。広報・宣伝だけでなく、チケットの販売・購入までインターネットで行えることの重要性が強調されました。

 続いて、動画を活用した広報について、いずみホールの取り組みをご紹介いただきました。

出演者が作品を紹介する動画を配信し、それをツイッターやフェイスブックで拡散。そこから公式ホームページにアクセスしてもらうことで、チケット購入まで結び付けるという立体的な戦略です。今や、撮影から編集、配信まで、誰でも手が出しやすい時代。活用しない手はありませんね。

 DSC08762最後に受講者から、「リリースはどこにどうやって送ればいいか?」という質問がでると、森岡さんがとっておきの秘訣を伝授。会場中から一斉にペンを走らせる音が聞こえました。

 

この講座を終えて、森岡さんが寄稿されたコラムが、6月10日付の大阪日日新聞に掲載されています。デジタル版もございますのでどうぞご覧ください。

大阪日日新聞  http://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/stage/150610/20150610030.html

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