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2017.03.31

アーツマネジメント講座2016 講座10『日本舞踊と花柳界~新潟の市山流宗家に学ぶ』12月5日レポート

日本三大芸妓の街として、京都の祇園、東京の新橋と並び称されてきた新潟古町。200年の伝統を誇る新潟古町芸妓は、湊町新潟を代表する文化のひとつで、とくに踊りは、新潟に本拠を置く日本舞踊の名門・市山流によって磨かれています。
この市山流・七代目宗家である市山七十世(なそよ)さんを迎え、地域にねざす伝統芸能の後継者育成と、地域文化への貢献を紹介。
また、芸妓として育成され、市山流の舞踊家として名取ともなった、七十奈緒さん、七十凌香さん、七十華世さんのお話も交え、地域の特色をいかした伝統文化の継承についてお話を伺いました。

  

●日本舞踊・市山流と古町芸妓

市山流は、18世紀半ばに大阪で誕生。その後、三代目・市山七十郎(しちじゅうろう)が新潟に本拠を置き、四代目以降は女流舞踊家によって継承されているといいます。古町芸妓の指導や、舞踊会の企画など、新潟の舞踊界、そして花柳界の発展に尽力してきました。
首都圏以外に拠点を置く宗家で、120年以上の歴史を誇る流派は全国でも唯一なのです。

しかし、時代の移り変わりの中で古町芸妓も激減し、だんだんと高齢化が問題に。
そこで、伝統ある古町芸妓の芸ともてなしの心を、新潟市の魅力ある文化と位置づけ、その保全と継承を目的として、地元有力企業約80社が出資して、全国初の株式会社組織の芸妓養成および派遣会社として、1987年に「柳都振興株式会社」が誕生しました。芸妓たちは、会社員として雇用される形となり、花柳界にはなかった新しい試みがなされたのです。
通常、芸妓は置屋に入り、そこから芸を磨いて芸者として派遣されるもの。柳都振興株式会社では1から育てるため、踊りの稽古や着物などもある程度会社が面倒を見て、給料も支払われます。
また芸妓たちが協力し合い、結婚や出産をしても、長くこの仕事が続けられるように改革を進めてきました。

そうしたなか、平成15年に、市山流が新潟市の無形文化財の第1号に。
これをきっかけに、市山流が指導をおこなう古町芸妓も、新潟市の大切な文化遺産であるという意識がますます高まり、官民がお金を出しあって「古町芸妓育成支援事業」(平成25年~)が立ち上がるなど、地域をあげて後継者の育成にますます力が入れられるようになったのだそうです。

●伝統芸能の継承

沖縄でも、伝統芸能を後世にどう伝えていくか、という課題をよく耳にします。
受講者からは、沖縄では、郷土芸能が色濃く残っている地域もあり、また小学校の運動会では必ずエイサーを取り入れるなど、子どもたちに伝統を継承していくための、地域ならではの取組も多くみられるとの声がありました。

七十世さんは、市山流が7代続いたのも、初代や2代目が作ったものが今でも残っているのも、やはり東京ではなく、新潟に本拠を置き続けてきたからこそだといいます。
新潟にも独自の文化というものがあありますが、情報や交通の発達で東京が近くなり、それがだんだん薄れていくような感覚があるといいます。
沖縄にしかないもの、新潟にしかないものをいかに大切に残していくかが、我々の課題だと語りました。

また、芸妓としてお座敷にも出る七十奈緒さんは、一方で、古町芸妓が観光資源として打ち出されてきたことの問題もあるといいます。
本来、お座敷は、芸妓をよんで、ゆったりくつろいで芸を楽しんでもらうもの。
しかし最近は、短時間でお酌をして、お座敷遊びをして、終了、というのが増えてきたのだそう。
季節の踊りや男踊りなど、いろいろな踊りの稽古をしますが、お座敷では新潟紹介用の観光客向けのワンパターンのものばかりになりがち。
観光資源としての芸妓と、昔ながらの伝統とのバランスをとっていくことの難しさも語られました。

琉球舞踊でも若い舞踊家たちが新しい作品を創作していたりしますが、日本舞踊でも若手舞踊家を中心とした流派を超えた集団も出てきているなど、これまでは違った形で、日本舞踊そのものを普及していくための取組も行われているそうです。

芸妓の世界も株式会社組織にすることで、伝統文化に若い世代が入りやすくなり、また現代社会の変化に対応して、女性の働く場としてよりよい環境づくりに対応してきた実績は、伝統芸能の継承という観点からも学ぶべき点が多いお話でした。

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講座10 日本舞踊と花柳界~新潟の市山流宗家に学ぶ
【講師】市山 七十世(日本舞踊家)、市山 七十奈緒、市山 七十華世、市山 七十凌香
【日時】平成28年12月5日(月)18:30~20:30
【会場】沖縄産業支援センター

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