GEIDANKYO 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協] 芸能花伝舎 沖縄県

HOME

2015.05.29

アーツマネジメント連続講座 講座①『文化政策と芸術活動の経済的成立』5月12日レポート

講座①『文化政策と芸術活動の経済的成立』の2日目は、民間の文化助成団体の老舗でありトップランナーでもある、公益財団法人セゾン文化財団の久野敦子さんにお越しいただきました。

DSC08668まずは、「昨日の講座ではどんなお話がありましたか?」という受講者への久野さんの問いかけから始まりました。印象に残った話や言葉を、受講者たちが順番に述べていきます。皆さんとても緊張した様子でしたが、終了後のアンケートでは「インタラクティブで面白かった」という声も聞かれました。人から聞いた話を、自分の言葉を交えながら他人に説明するという体験は、自身の頭の整理にもなるようです。

 この振りかえりを踏まえ、「助成と寄付の違いとは」といった根本的なテーマから、支援をする側の3つのセクター(行政、企業、民間)の特徴と違い、会員制度や個人寄付、有料配信といった助成以外の資金獲得方法など、前日の講義内容がより立体的になるような視点のお話がありました。

 

国内の民間助成団体による支援対象のほとんどが「科学」、「技術」、「医療」に集中しており、「文化」、「芸術」への支援は助成額全体の1%にも満たないとのこと。
しかし、「環境」や「福祉」、「国際交流」などへの助成も、その性格をよく分析し自分たちの目的に引き寄せて考えることで、申請できる範囲はぐっと増えてくると語る久野さん。

また、活動資金だけでなく、施設や備品の貸与を通した直接的支援を行う団体があるのも民間ならではです。
中でも、アーティストの創作活動に直接的支援を行うことを目的としてスタートした「トヨタ創造空間プロジェクト」の活動はよく知られています。このプロジェクトではコンテンポラリーダンスのダンサーを対象に、トヨタ自動車の本社地下にある社員用体育館をアーティストの創造空間として提供しています。

 

一方、助成する側も限られた活動資金のなかで、その支援の在り方について探求を続けています。それら取組のいくつかを久野さんにご紹介いただきました。 
公益社団法人企業メセナ協議会が行っている「助成認定制度」は、芸術・文化活動等への民間寄付を税制面から促進する目的で運営されています。企業や個人が、公益社団法人である協議会の助成活動に対して寄付を行うことで、税制優遇が受けられる制度です。
おおさか創造千島財団は、活動資金の一部を助成する「創造活動助成」のほかに、造船所跡地を改装した創造スペース「クリエイティブセンター大阪(CCO)」を創造活動の舞台として無償で提供する「スペース助成」や、財団所在地である大阪市・北加賀屋を創造拠点として活動するアート関係者・団体等と連携して、その活動資金の一部を助成金として交付する「パートナーシップ助成」なども行っています。

これら事例を通して、久野さんは「支援プログラムは、支援をする側とされる側がともに作っていくものなのではないか」という問いを投げかけます。

 

DSC08690講座の後半は、申請時のポイントについての具体的なお話。

実際に申請書を書く前に、自分たちが何者で何を目的としどんな内容であるか、という点について確固たる自信を持てるまでブレインストーミングを重ねる。同じような企画がたくさん申請されてくる中で、企画の実現性についてどれくらい説得力があるかが採択のカギ。自分自身のモチベーションの高さが、説得する言葉のレベルにつながってくる、と言います。
これらのポイントは、前日の石田さんのメッセージとも重なります。

また、昨今では助成する側が申請者に対して高い信頼度を求めるようになりました。文化芸術団体でも法人格を有していないと助成申請が難しい状況であり、また監事・監査についても非常に厳しい水準が求められるようになってきています。
必要に応じて法人格の取得を検討するとともに、本当にその助成を受ける必要があるのかもよく考えてほしいとのこと。

助成に関してはマッチングが非常に大事なので、募集要項を隅から隅までとにかくよく読み込み、自分の事業を達成するためのパートナーを探すような気持ちで支援先を探してほしいと久野さんは語ります。

また、実際に助成申請が通った際には、事業報告と評価も重要になっていきます。事業の報告と評価は、支援を受けた側だけでなく、支援を行った側にとっても成果として蓄積され、それが支援事業全体の発展にもつながっていくからです。事業成果を共有することで、支援する側、される側のより良い関係構築につながります。

 

最後に、セゾン文化財団の助成プログラムの成り立ちと考え方についてご説明いただきました。
財団の目的である「ミッション」、支援内容である「プログラム」、そして支援を受けた事業の「評価」。
この3つを繰り返すことで、セゾン文化財団は絶えず変化し続ける効果的なプログラムを生み出しています。

 受講者からの「支援する側としては、支援を受けた側からどういう報告内容があると嬉しいか」という質問にも、セゾン文化財団の例をあげながらお答えくださいました。

 

石田先生によるマクロな視点と、久野さんによるミクロな視点のお話が重なり合い、助成や支援、文化政策に対する理解が深まった2日間でした。

一覧へ戻る

ARCHIVES