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2017.03.31

アーツマネジメント講座2016 講座11『あらゆる人々の芸術体験のために~芸術をつくる側から考える鑑賞・体験サポート』12月19日レポート

公演やイベントを企画するとき、聴覚や視覚などの障がいをもつの方々のことを考えていますか?
講座11では、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けても、全国的にますます意識が高まっている障がい者サポートについて、公演を企画する側からできることを考えます。
講師には、NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(Ta-net)理事長の廣川麻子さんを迎え、劇場でできるサポートについて伺いました。
廣川さんご自身も聴覚障害をお持ちのため、沖縄聴覚障害者情報センター沖縄県難聴・中途失聴者協会の協力により、この講座でも、手話通訳やUDトーク(音声認識アプリ)による情報支援を取り入れました。

●聞こえないことって、どういうことだろう?

はじめに、「聞こえないことで、便利なこと、不便なこと、思いつくことを付箋に書いて貼ってください」。
受講者が、思いつくまま書き出したメモを見ながら、廣川さんが「聞こえないこと」について説明します。

・聞こえの由来(先天性か後天性か)
・聞こえのレベル(全く聞こえないか、小さな音が聞きづらいのか)

・手話(声をつけながらの手話、声なし手話など)
・音声(口話訓練により話せる人もいる、主に難聴者)
・筆談(視覚的に確実な方法だが日本語が苦手な人もいる)

「聞こえない」といっても、障がいの状況も、必要とされるコミュニケーションの方法も、一様ではないのです。

●受付対応のサポート

聴覚障害のある方に対する受付対応には、筆談という方法があります。紙とペンを用意しておけば、すぐにできる最もポピュラーな方法です。
他にも、ホワイトボード、スマートフォン・携帯電話などのメモ帳機能、電子メモパッドを使う方法もあります。
イラストを指差すだけで意志を伝えることができるコミュニケーションボードをあらかじめ作成して置いておくことや、受付に「筆談します」の表示を掲げておくことも、必要とする人たちには助けになるのだそう。
特別な用具も技術も必要とはしないので、これはすぐにでも取り入れられそうです。

また、受付などの対応のときに一番大事なことは、目を合わせて、笑顔で対応すること。
筆談のときも、文字を書きながらの口頭説明は避けてください。書いている文字と、話している口元を同時に見ることができないため、分かりにくくなります。
そして、声ははっきり、明瞭に、口の形を見せてください。
本人のニーズを大事にしつつ(過剰な補助を好まない方もいる)、伝えるべきことは確実にすることがポイントです。

よりきちんとした対応をするためには、手話のできるスタッフを配置する、関係者が自身で手話を学ぶなどの方法もあります。
沖縄聴覚障害者情報センターでも手話通訳の派遣をされていますし、沖縄で手話を学べる場所についても紹介がありました。

●鑑賞のサポート

演劇鑑賞のサポートとしては、「台本の貸し出し」があります。演者がつかうそのままの台本を当日受付で渡したり、事前送付したり。また、台本に音の情報を入れる、ト書きをカットする、役の目印(衣装や背格好などの特徴)を書き込むなど、聴覚障害のある方が観劇する際に分かりやすいように、貸し出し用に台本を再構築する場合もあるとのこと。
ただし、紙やデータで渡すことになるので、漏洩のリスクを避けるため、観劇後は回収したり削除してもらったり、対策が必要です。
著作権にもふれることなので、作家に許諾がとれない(オリジナル作品でないなど)場合は、台本の貸し出しは難しい場合も考えられます。

聴覚補償のシステムに、「磁気ループ」(国際的にはヒアリングループともいう)というものがあります。これは補聴器の聞こえを明瞭にする放送設備で、最近では全国各地で劇場や講演会の会場などで利用されている例があるのだそう。
しかし、まだまだ一般的には知られていないのが現状。ある公立劇場では、磁気ループが劇場内に設置されていたにも関わらず、事業担当者がその存在を知らずに何年も使用されていなかったという例もあったそうです。
施設関係者は、今一度、設備について確認し、もし磁気ループが設置されている場合は、ホームページなどで公表してほしいとのこと。使いたい人、必要としている人たちのためにも、活用が広まることを期待したいですね。

コンサートなど音楽鑑賞の際につかう聴覚補償システムとして、抱えることで音の振動を体で感じ取る事ができるように補助する「抱っこスピーカー」があります。

このほか、舞台上などに字幕をつける方法もあります。
字幕作成には、インターネットから無料でダウンロードできるアプリやソフトもありますし、パワーポイントで1枚1枚つくる方法もあります。
また、今回の講座でも取り入れたUDトーク(音声認識アプリ)は、話している言葉をその場で文字に起こすことが可能なシステム。ほぼタイムラグなく言葉が
文字となって表示されるので、一般企業などでも会議や説明会など、聴覚障害の方の社会参加促進のために、全国で普及が進められています。
ただし、UDトークの注意点としては、インターネットが使える環境が必要であること。また、法人として使う場合は、有償ライセンスとなることなどが挙げら
れます。
沖縄県難聴・中途失聴者協会は、UDトークのセッティングを請け負うことができるので、もし沖縄で取り入れたいときには相談にのってくださるそうです。
まずは、スマートフォンやタブレットでも、個人向けの無料アプリは使えるので、どんなものか試してみてはいかがでしょうか?

舞台上などに手話通訳を配置する方法もあります。聴覚障害の方の中には、日本語が苦手な方や、台本を読み慣れていない方もいるので、手話でストーリーを要約して、上演前などに説明タイムをもうけるという事例もあるのだそう。
また舞台上で、俳優のセリフを手話で同時通訳するやり方もあります。この場合は、通訳の方も稽古の段階から参加して、状況に合わせて準備をすることが必要。

そして、視覚障害のある方に対しては、誘導や声がけを積極的に行ってほしいといいます。
例えば、次のようなサポートも事例としてあるそうです。
・最寄駅から劇場までの送迎、劇場入り口からトイレや座席への誘導
・舞台上の小道具や舞台美術、役の衣装や身体的な特徴などのガイドの実施
・チラシ、プログラム等の点字版作成
・鑑賞中の音声ガイド


●受付対応ロールプレイ

講座後半は、聴覚障害の方の受付対応を、受講者全員が模擬体験。Ta-net、沖縄聴覚障害者情報センターの協力を得て、実際に聞こえない方が受付にやってきたときの対応を実践してみます。
レクチャーの中で、筆談の事例が出てきていましたが、いざやってみようとすると、実はなかなかうまくできません。
書きながらしゃべってしまったり、丁寧に書こうとして時間がとってもかかってしまったり。手話で話しかけてくる相手に、焦ってしまったり。
相手の意思を理解し、必要な情報を正確に伝えることが最も大切で、そのための方法として身近な物を使ってできることは何か。一人ひとりが考えながら実践しました。

廣川さんからは、簡単な挨拶の手話も学び、実りの多い回となりました。

鑑賞サポートなどは、活動の状況によって、取り入れられることとそうでないことがあるかもしれません。
県内在住の聞こえない方からのコメントで、「組踊などの沖縄の芸能にも、幼いころから聞こえないということで触れられる機会がなかった。ぜひ観てみたいと思っている方は多いはず。」という言葉がありました。
受講者からは、「今後のイベントを考える上で大変参考になった」、「業務の中で障害のある方に対応する際の不安がなくなった」など、前向きな意見が多く聞かれました。

こうした支援を必要とする人たちがいるということを知ること。この講座が、その第一歩を踏み出すきっかけにはなればと願います。

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講座11 あらゆる人々の芸術体験のために~芸術をつくる側から考える鑑賞・体験サポート
【日時】平成28年12月19日(月)18:30~20:30
【会場】沖縄産業支援センター
【講師】廣川麻子(NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク理事長)
【協力】石川絵理、小川加代子(NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)
   沖縄聴覚障害者情報センター/沖縄県難聴・中途失聴者協会

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